「プラトニックな浮気」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?浮気や不倫と聞いたとき、パートナー以外の人と性的関係を持つことをイメージする方が多いと思います。しかしその典型に当てはまらない、プラトニック浮気・プラトニック不倫というものが存在します。
これがどのような意味を持つのか、そして「既婚者のするプラトニックな浮気に関しても慰謝料の請求をすることはできるのか」という点に焦点を当てて解説をしていきます。
プラトニック浮気とは
浮気や不倫の捉え方は人それぞれです。少なくとも不倫と呼ぶときは既婚者が浮気をしたときであると考えられますが、いずれにしろ浮気の線引きはあいまいです。
ただ、性的関係を持ったときには浮気が成立していると捉えることがほとんどです。
これに対して“プラトニック浮気”や“プラトニック不倫”は、性的な関係を伴わない、精神的な繋がりだけの浮気や不倫のことを指します。
プラトニックは“Platonic”から来ています。相手を思うさま。精神的な様子を指す言葉です。
多くの場合、恋愛感情を抱いたときは「精神的な繋がり」と「肉体的な繋がり」を求めるものです。しかしプラトニック浮気では前者の精神的な繋がりしか持ちません。
この点が、一般的な浮気との大きな違いです。
プラトニックな浮気・不倫に対する慰謝料請求
既婚者が不倫をしたとき、離婚を求めたり、慰謝料の請求を求めたりすることがあります。
プラトニックな浮気においてこれらの請求は可能なのでしょうか。
離婚は合意があれば可能
まず離婚の成立についてですが、少なくとも夫婦の合意があれば離婚は可能です。
これはプラトニックな浮気を理由としない場合でも同様です。
どんな背景であろうと、婚姻関係にある2人が話し合って離婚をすることに関して意見が一致すれば、離婚届の提出により離婚を成立させることはできます。
問題は、プラトニック浮気をした一方当事者が離婚を拒絶しているケースです。
この場合は調停の申し立てをし、その後最終的には裁判により離婚を請求することになります。
この段階でポイントとなるのは民法に規定されている離婚事由の有無です。一般的な浮気であれば、離婚事由の1つ“不貞行為”に該当することを立証して離婚を認めてもらうという方向で訴訟を提起することになるでしょう。
しかし性的関係を伴わないプラトニックな浮気では、不貞行為を理由に離婚することはできません。
そこで、別の離婚事由に該当することを示す必要があります。
考えられるのは“悪意の遺棄”や“その他婚姻を継続し難い重大な事由”です。
配偶者が浮気相手に夢中になり、家庭を顧みず、生活もままならなくなるような事態が発生したときは、離婚が認められるかもしれません。
慰謝料請求は基本的にできない
次に慰謝料の請求についてですが、プラトニックな浮気を理由とする慰謝料の請求は、基本的にはできません。
慰謝料請求をするには相手方の不法行為が認められなければならず、気持ちが浮気相手に寄ってしまうことを当然に不法行為と評価することはできないからです。
一方、肉体関係を伴う浮気であれば、その事実を示すことで、夫婦の貞操義務に反する不法行為と評価してもらう余地があります。
慰謝料請求ができるケース
プラトニックな浮気をしたパートナーや浮気相手に対して、慰謝料請求が絶対にできないということでもありません。
プラトニックな浮気がきっかけで起こした行動、生活の変化が夫婦関係の破綻を引き起こすことで、これに対して慰謝料の請求ができる可能性もあります。
例えば浮気相手が執拗に離婚や別居を迫る行為が、不法行為として成立する可能性があります。ただしそのためには、法律上の離婚事由である「婚姻を継続しがたい重大な事由」の発生に加担したと評価されるほどの行為があったことを立証する必要があるでしょう。
なお、パートナーや浮気相手が、慰謝料の支払いを避けるために「プラトニックな関係であった」と主張している可能性もあります。
そのため慰謝料請求は難しいと諦める前に、探偵事務所に依頼するなどして肉体関係の有無を調べることが大切です。
ラブホテルや浮気相手の自宅に出入りしている写真、肉体関係の存在を匂わせるようなメッセージのやり取りなどが見つかれば、不貞行為が認められて慰謝料の請求も叶う可能性が高くなります。